離島・へき地医療の先生がなぜ凄いか?
いまは病院ひとつ受診する際にも、診療科を選択する必要があります。総合病院でなければ、病院を選択するところからはじまることでしょう。
それは、医師たちにも専門とする診療科があるからであり、だからこそ私たちは高度な治療を受けられるのです。
しかし、それは豊富な人材があってこそ。
医師の偏在化にあえぐ地域では、医師がただ一人ということも珍しくありません。そんな中で、これは専門だから診ることができるけれども、これは専門外だから診れないよ、というわけにはいきません。
いま現在は、プライマリケアの基本的な診察ができるよう、研修医時代に広く診療科を経験できるような制度が構築されています。その中には救急医療や地域研修なども含まれてはいるのですが、やはり、研修後に診療科を選択していく中で総合的というよりも、専門的な知識を深めていくことになります。
つまり、ある特定の分野については専門家ではありますが、違う診療科のことについては知識に乏しいということだって珍しくはないのです。
しかし、へき地医療ではまず“診る”ということが大切になってきます。
離島やへき地には様々な年代の方が暮らしていますので、内科や外科だけでなく、小児科など幅広い知識とそれに伴う経験も必要とされるでしょう。
そして、それら全てにスペシャリストになるというよりも、ゼネラリストとしてプライマリケアに通じていることが求められているのです。
例えば、あるへき地では初めて訪れた患者さんについて、外科的処置を必要としたものが圧倒的に多かったというデータがあります。考えてみると、慢性疾患の場合は、継続的に受診していることが多いわけですから想定範囲内のことなのかもしれません。
多発する疾患がわかれば、処置も予測することができます。
こういった傾向は、土地の年齢層や生活習慣などにより変化することはありますが、離島やへき地で医療に携わる方々は、このようなことも把握した上で治療にあたられています。
そうはいっても当然、高度な治療や医療機器を要する処置だって必要になることはあるでしょう。
そんなとき、どこまでがへき地で行うことのできる医療なのか、患者さんを都市部へ運ぶのであれば、どのタイミングで送ることが一番ベストなのか。それらの見極めも、こういった医療現場では求められているのです。