喜界島徳洲会病院 滝原浩守先生インタビュー
今回は喜界島徳洲会病院へ定期的に来られている滝原先生に取材をさせて頂きました。初の喜界島上陸でしたが、台風が近づいており、日帰り取材の予定が結局2泊することになったという予想外の展開だった今回の取材でした。
まずは先生のインタビューをご覧ください!
ドクターになられたきっかけについて教えてください
実家が整骨院を経営しており、医療に携わっていたことが大きく影響していると思います。
整骨院を経営されていたとのことですが、整形外科ではなく消化器内科を選ばれたのはなぜでしょうか
内視鏡をしたいと思うようになったことがきっかけです。
もともと、徳洲会という組織は救急や離島、へき地医療に力を入れており、そういった環境において内視鏡は、救急から健康診断など広い範囲でニーズがあります。
また、外科と違い、処置に対するハードルが比較的低いことも大きいですね。
心臓カテーテルは大がかりなカテ室が必要ですし、大きなオペ室も必要です。麻酔科など他のスタッフも必要ですが、内視鏡については内視鏡自体と看護師さんが一人いれば検査は行えます。比較的、導入しやすいという特徴があると思います。
徳洲会病院を選んだ理由をお聞かせください
大学の先輩が何人か徳洲会にいたことも理由の一つですし、色々なところに病院があるので研修に応募しやすいということもあります。また、都市部の有名な病院と比べると倍率がそれほど高くないので入りやすいということも大きかったですね。
地方病院よりも密度の濃い研修ができるのではないかという期待もありました。
割と、救急を軸としたローテーションも魅力的でしたね。
実際に、入ってみてどうでしたか?
地方に行くと、若い年次であっても責任を持って診療にあたることが多いので、やりがいに結びつきます。
離島における内視鏡の検査を数多くされていらっしゃいますが、どのような点で良かったと感じられていますか?
そもそも検査を受けていない人がたくさんいる地域で、医療需要に対して供給が少ないという状況があります。例えば、喜界島には私を含めて内視鏡検査ができる医師は3人来ており、週に1回は検査ができる体制を整えていますが、具合が悪くてもすぐに対応できないという不便さがあります。
検査がすぐに受けられる環境ではなかったこともあり、進行がんが見つかることもあります。小さい段階で見つければお腹を切らずに治せますし、治療費用も安く抑えられます。さらに、島外へ移動しなくても島内で治療が完結できるという最大のメリットも得られますので、そこを目指して喜界島へ応援に来ています。
喜界島に特徴的な消化器疾患はありますか?
沖縄の方へ行くとピロリ菌の感染が少なくなる傾向があります。沖縄は胃がんの人が少なく、このあたりでピロリ菌の株が変わります。
ピロリ菌の中でもヨーロッパ付近の株は胃がんになりにくいのに対して、日本も含めて東アジアは割とがん化しやすいですね。喜界島はまだ本島に近いので時々、胃がんになる方がいらっしゃいます。あとは、お酒を飲む機会が多いので、食道炎や食道がんの方も見かけますね。
ただし、人口当たりで見るとそこまで極端に多いわけではありません。全体の人口自体が少ないので滅多には見つからないのですが。
喜界島での診療以外の楽しみを教えてください
シュノーケリングもしますし、島の人たちと飲んだり、応援に来た研修医と遊んだりすることもあります。
組織として、下の先生たちを育てる意識は強いのでしょうか?
そうしなければ仕事がまわらないので、足りないところは指導して出来るだけ早く育てるようにしています。
要するに、研修医が困っていて放っておけば、そこで治療が止まってしまうので自然と手伝う環境になっていますね。
岸和田徳洲会病院と喜界島を行き来するメリットについて教えてください
ずっと同じところにいると、慣れてきてしまい煮詰まることもあります。また、岸和田徳洲会病院の方が重症な患者さんが多いので、そういう意味では全く違う環境のところに来るということは気分転換にもなりますね。
今後、取り組んでいきたいことはありますか?
今、取り組んでいることは膵臓がんです。がんの頻度でいうと肺がんがもっとも多く、胃がんや大腸がん、女性の場合は乳がんや婦人科疾患が入ってきますが、全国統計で言うと、死因としては5番目くらいに多いがんになります。
胃カメラのおかげで胃がんの発見率は上昇し、内視鏡治療で治っているケースは増えていますが、膵臓がんは発見された時点で既に転移していることが多いがんです。
また、1センチ未満で見つけなければ、手術だけで完治することは難しくなります。CTやMRIもありますが、超音波内視鏡という特殊な内視鏡があり、胃の壁越しに超音波をあてて、胃の裏側にある膵臓を見ることができます。こういったものを駆使して小さな膵臓がんを見つけていきたいと思っています。
そして、次の段階ではへき地や離島にも普及できたらいいですよね。
最後に伝えたいメッセージがあればお願いします
若い先生については、安全なところで医療を行いたいという意識もあると思いますし、こういった環境に来るとどうしても冒険しないといけない部分も出て来るので、一概に皆に向くわけではないと思っています。
でも、緊急手術や搬送準備も含めて、病院のバックグラウンドが整っているので冒険心のある人にはぜひ一緒に来てもらいたいと思っています。
さらに、離島の環境を活かすことで自分の得意分野を活かすことができると考えています。離島医療というとドクターコトーのように生涯をそこで捧げるというイメージがあるかもしれませんが、短期の手助けをしながら医療格差を埋め合わせているというのが実際のところです。一般の意識よりもハードルは低いので、興味があれば一度、足を運んでもらったら楽しめると思います。
大それた志がなくても、単に海が好きだとか、普段の現実から離れて違う環境で過ごしてみたいという方にも来ていただきたいですね。
まとめ
今回も滝原先生のお話を伺いながら、井上先生同様、熱い思いを持ち、まじめに取り組むグループなんだなと改めて感じさせていただきました。
冒頭に書いた通り、台風接近で予定していた飛行機が飛ばなくなってしまい、
その夜は先生方と晩御飯をご一緒させて頂きました。インタビューでは見れないとても面白い一面を拝見し、病院スタッフとの信頼関係やお仕事を楽しまれている様子がよくわかりました。
予定していた仕事が出来なかったのですが、逆に台風が来てくれたことにより、いいことが多かった今回の取材の旅でした。
関連サイト
喜界島徳洲会病院