今回は離島での不妊治療についての取材を行いました。基本的に離島では不妊治療を行うことは出来ないことがほとんどですので、離島から都市部に通院をしなくてはいけないことになります。
今回は離島からの患者さんが多く通院されている鹿児島市の松田ウイメンズクリニックの松田和洋院長のご協力を得て、離島から通院して、妊活をされていた4名の皆さまにインタビューをさせて頂きました。
今回の記事は前半の2名の方の取材となります。1人目は沖永良部島、2人目は種子島の方です。ぜひご覧くださいね。
★不妊治療患者さんインタビュー(1)
~沖永良部島から鹿児島市への通院~
離島で治療に取り組むようになったきっかけについて教えてください。
島はとても狭く、周りはみんな知っている人ばかりです。私の場合は主人の実家がお店をしているので手伝いをしているのですが、接客業となると結婚した時点で大騒ぎです。そして、次は子供だよねという感覚があり、毎日のように子供のことを聞かれるのが1、2年続きました。
悪気はないと思いますが口の悪い人も結構いるので、毎朝、外に出るのが嫌になるくらい相当なストレスでした。また、私だけではなくお義母さんにも子供のことを聞く人もいたので年齢のことも考えた上で不妊治療に踏み切ろうと思ったのがきっかけです。多分、そういう人は結構多いと思います。
沖縄には、不妊専門のクリニックはなかったのでしょうか?
最初は沖縄のクリニックへ行ったのですが、こんなことがあるんだと思うくらい私には合わなかったですね。先生やスタッフの対応が冷たく感じ、どんどん進められていったように思います。こちらも初めての経験なので戸惑っていましたし、不安になりましたね。
そんなとき、主人の知り合いが離島から鹿児島のクリニックへ通っていると聞き、紹介をしてもらいました。人気のクリニックなので、予約を入れてから初診まで半年くらいかかったので最初は長く感じました。
離島からの通院は大変だったのではないでしょうか。
沖縄までは船で6時間かかるのですが、安く行くことができます。鹿児島だと船はありますが1日半かかります。でも、時間がもったいないので飛行機で通っていました。飛行機だと離島割があり、片道3万円のところ1.5万円でいくことができます。費用はかかりますが、やはり時間が大事なのでどうしても飛行機になってしまいます。
鹿児島のクリニックへは、どのくらいの期間通ったのでしょうか?
これまで1年ほど、そして今は2人目が欲しくてまた通っています。
1人目のときは、ちょうど1年通ったときに先生の方から通院が大変だからステップアップして体外受精にしてみたらと提案していただき、1回目ですぐにできました。
でも、2人目は2回チャレンジしてダメだったので、すごくストレスを感じましたね。また、通っていた去年の夏は台風で帰れずホテルに1週間滞在することもありました。上の子を連れてだったので、食事も大変でしたしホテル代もかさんでしまいました。
2人目を作ろうと思ったきっかけについて教えてください。
やはり、兄弟をつくってあげたいという思いからです。島でも言われますし、主人も2人目が欲しいと話していたことに加えて、私の年齢も高くなってきたので焦っていたこともあります。
2人目については2回チャレンジして凍結卵が1つしかなかったので、もう一度、採卵から始め、10個凍結することができました。
今は新型コロナウイルスの関係で受診を控えていますが、今のうちに体づくりをしておこうと思っています。
モチベーションはどのように維持されているのでしょうか。
1人目の時はそこまで苦痛を感じていませんでした。やはり、1人目ができると「この子だけでいいかもしれない」「悲しい思いをさせて、鹿児島という知らない土地で預けるくらいだったら」という思いはありますが、やはり主人が「今だけだから頑張ろう」「失敗しても大丈夫だし、お金の心配はいらない」と励ましてくれるから頑張れている感じですね。本当に感謝しています。
離島から不妊治療のために本島へ通う人に向けてアドバイスがあればお願いします。
夏は台風が頻繁にくるので、やめた方がいいと思います。私の場合、今回は台風前の寒い時期に通うようにしていました。台風にあたってしまうと全然帰れないですし、プロペラ機だと全く飛ばないので。
また、島は人と人とが近い関係にあるので、不妊治療を迷っている時はオープンな気持ちでいようと思っていました。子供のことを聞かれても、今、不妊治療中で通っていますと伝えていると自然に言われなくなりましたね。
そして、信頼できる友人や家族に打ち明けることで病院を紹介してもらえたり、アドバイスがもらえることもありました。島の人たちは皆さん近くてあったかいので、自分一人で考え込むよりは打ち明けた方が上手く進むことが多いと思います。
私もお義母さんから「治療も良い風に捉えていれば絶対に上手くいくよ」と言われていましたし、周りが前向きであることも大切ですね。
クリニックへのメッセージがあればお願いします。
本当に感謝の一言に尽きますね。相当気を遣っていただき、離島ということで予約の変更もすぐに受け入れてくれました。常に飛行機や泊まる場所のことも心配してもらいました。
これからも治療のために通う予定ですが、「末長くよろしくお願いします」と伝えたいですね。
★不妊治療患者さんインタビュー(2)
~種子島から鹿児島市内への通院~
不妊治療をはじめたきっかけについて教えてください。
私は、20代前半から生理痛が重くなりました。大人になってから重くなると、子宮筋腫や婦人科系の病気になっているリスクが高いと聞き、受診しました。その時に多嚢胞性卵巣症候群だと言われ、もしかすると病院に通わないといけないかもしれないと告げられました。
そうして34歳で結婚したのですが、子供もすぐにできなかったですし、年齢も30代後半に差し掛かってきたのをきっかけに再度、受診をしました。
結婚を機に種子島に引っ越してきたので不安もありましたが、とても住みやすいところで気に入っています。でも、医療面の不安というのは常にあり、いざとなったら鹿児島の病院へも行けるように生命保険や医療保険は手厚くしています。
松田ウイメンズクリニックを選んだのは、なぜでしょうか。
鹿児島に知り合いがいなかったので、インターネットで病院を探しました。確か、鹿児島の不妊治療の助成制度を調べていてヒットしたのと、場所が通いやすそう、ホームページがしっかりしていたことが決め手となりました。
離島からの通院で大変だったことを教えてください。
まず、日程が組めないことですね。私は自営業なのですが、今月は何日に生理がきたら通えるといったスケジュール管理をしていました。きっと、普通のお勤めをしながら離島から不妊治療で通うということはかなり難しいと思います。
たった一時間の診察にも丸一日かかりますし、費用もかさみます。夏は通院を予定している日に台風がくることもあり、そうなると翌日に変えてもらう、今回は見送るということもありましたね。
不妊治療は大変なことも多いと思いますが、どのようにモチベーションを維持していたのでしょうか。
元々、仕事で月に3、4回は鹿児島へ行っていたので、そういった機会と組み合わせるようにしていました。通院を始めた当初は半年くらい仕事やプライベートの関係で通えない時期がありましたが、そのあとは体外受精に切り替えてすぐに妊娠できたのでモチベーションを維持することが大変だと感じたことはありません。
旦那さんは不妊治療に協力的でしたか?
夫も男性不妊だったので、一緒に取り組んでいました。
クリニックのサポートについてはいかがでしたか?
急に船が出航しなくなったので時間を変えて欲しいなど、受診時間の変更をお願いすることがありましたが、こちらの事情を理解して丁寧に対応してもらいました。
離島から通われている方が他にもいると思うので、遠慮するのではなく、一旦はこちらの希望を伝えてみるといいかもしれません。
離島で不妊治療をする人に向けてのアドバイスなどあればお願いします。
個人差はあると思いますが、私の場合は採卵スケジュールのカレンダーを病院からもらって参考にしていました。自分で予定を管理し、ここに仕事を入れなかったら病院に行けそうだなとイメージをしていました。
これから、不妊治療に取り組もうとされている方々に向けてメッセージをお願いします。
苦労はあると思いますが、私自身が「できることはやって、それでもダメだったら受け入れよう」という考えをもっているので、今できることを淡々と積み重ねていき、その先に良い結果がでたら良いと捉えてもらえるといいかなと思います。
クリニックの皆さんへのメッセージがあればお願いします。
色々と丁寧に対応してくださったことに感謝しています。また、「台風は大丈夫でしたか?」「お医者さんに言いにくいことは、私たちに言ってくださいね」など、看護師さんが細かく気を使って声掛けしてくれたことも嬉しかったです。
★まとめ
離島の不妊治療患者さんのリアルを垣間見たインタビューでした。
特に時間の問題、スケジュールの調整、心の持ち方、そして通院と治療のお金の問題と色々とハードルが高くなっていることが分かります。
今回のお二人はそんな中でも旦那さんの協力を得ながら、前向きに取り組んで、授かっておられました。
離島の医療ではご老人の脳や循環器疾患、がんなどに注目されますが、このように女性の不妊治療やお産などについても色々と大変なことが多いということが理解できるかと思います。
次回も続編として2名の方のインタビューをご紹介させて頂く予定です。
乞うご期待!
ご協力:松田ウイメンズクリニック(鹿児島市天文館)
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