ドクターインタビュー

手打診療所(下甑島)室原先生インタビュー

このたびは下甑島手打診療所の室原先生にインタビューをさせて頂きました。
所長の齋藤先生と共に2年前に手打診療所に赴任されて、そしてコロナショックが起きて、想定外の進展に大変だったと思います。

しかし、家族のご様子や島でイベントを企画されたりと前向きに活動されている様子をフェイスブックやブログを拝見し、取材させて頂こうと思いました。

それではインタビューの内容をどうぞ!

ドクターになられたきっかけについて教えてください。

純粋に、家業だったというのが本音です。元々、熊本の阿蘇にある杖立温泉近くで林業をしていたのですが、祖父が山から降り、医学部に入学したことが始まりです。祖父が診療所から病院を作って父親がそれを継いでという形ですね。ただ、昔は医者になることに対して反発しながら生きていましたけれど。

順天堂大学を選ばれた理由を教えてください。

センター試験が上手くいかず、国立大学が難しかったのが理由です。既に合格していた私立大学の中で一番、学費が低かったのが順天堂大学でした。入学してみると、とても良いところでしたね。

離島医療に関わるようになったきっかけについて教えてください。

順天堂大学を卒業し、東京の阿佐ヶ谷にある河北総合病院で初期研修を3年間しました。都会の病院なので、各科を専門でまわり、ゆくゆくはどこかの診療科の専門医になるのだろうと思いながら研修をしていたのですが、3年間が終わるときに全部楽しくて選べなかったのです。一つだけを選び、今後それだけで生きていくのかと思うとちょっとつまらないなと。初期研修は3年間あったので、一つの診療科が3か月と長く勉強できましたし、その分楽しさもたくさん知ることができて楽しかったですね。

2年目の途中から、診療科を選べないと思っていたところに、たまたま斎藤先生がされているゲネプロのメールが届きました。当時は、総合診療も全く知らなかったですし、河北総合病院の地域医療実習は地区の在宅診療が中心でした。

なので、それまで地域医療や総合診療について1ミリも考えたことがありませんでした。私の総合診療のイメージと言えば家庭医だったこともありますが、モラトリアムが欲しいと感じていたので、ゲネプロに入ればモラトリアムがあり、海外にも行けて楽しそうだと思い、ゲネプロに話を聞きに行きました。

候補地は千葉や長崎の五島列島などいくつがありましたが、当時すでに結婚して子供もいたので、家族で船に乗り、移住するのもおもしそうということで長崎の五島列島を選びました。

ゲネプロの研修はいかがでしたか。

長崎の上五島病院がすごく面白かったですね。ゲネプロのプログラムとしての研修病院であり、それに加えて、週に一回、オンラインの講習がありました。出られない時もありましたが、それも楽しかったですし、上五島病院自体がすごく良かったです。

私は上五島病院の内科で研修をしました。上五島病院の内科は、呼吸器や消化器、循環器と分かれておらず、内科の医者は全部の内科系の患者さんをジェネラルに診ていました。心不全の患者さんだったり、血便がでる入院患者を同じ医者が診るんです。さらに都会で研修をした私は、胃カメラができる医者は消化器内科の医者という常識しかなかったのですが、上五島病院の内科の先生は全員高いレベルで胃カメラができるんです。それには大きな衝撃を受けました。

そしてさらにその先生たちは、ジェネラリストだけどサブスペシャリティを持っていました。ある先生は、呼吸器内科を勉強しているので、専門医と同じクオリティで呼吸器内科の診療ができますし、他の先生は消化器内科の勉強してきているので、消化器内科の専門医と同じくらいのカメラの処置ができる。こんな集団があるんだと驚きました。逆に言えば、こんな医者が求められている地域があると知ってから、離島僻地医療が楽しくなってきました。

下甑島の手打診療所のプロジェクトに参加されていますが、そのきっかけについて教えてください。

面白そうだったからというのが本当のところです。当時、上五島からゲネプロを通じてモンゴルに行かせてもらい、その後に島根県の隠岐島前病院にいっていました。予定ではそのあとは熊本に帰ってどこかの総合診療科に入ろうと思っていました。そんな時に、斎藤先生から連絡いただいて嬉しかったですし、楽しそうというのもあり参加することにしました。

実際に住んでみていかがですか。

島ごとに住民のキャラクターが違いますね。

下甑島は陽気な方が多く、受け入れて話しかけてくれるので、溶け込みやすいですね。

島でイベントを企画されていますが、反応はどうですか。

写真展はとても楽しかったですね。たしか200人くらいの方が来てくださったと思います。プロカメラマンが撮影した昔の写真を見て涙する人もいました。その時、「島の外の人向けのイベントは結構あるけど、島民に向けてのイベントはあまりないから、こういうのはすごく良かった」と言われたのが嬉しかったですね。また、何かできたら良いなと思います。

他の島と甑島を比べて、似ている点や異なる点を教えてください。

人口規模が違うので、カバーする診療範囲が違いました。

上五島は人口約2万人、隠岐島前の西ノ島は3000人ですが、近接する2つの島を合わせると約6000人になります。そして、下甑島は2000人弱です。上五島病院は総合病院なので、内科や外科、整形外科や産婦人科もありましたが、隠岐島前病院と下甑手打診療所は総合診療医しかいません。なので、内科だけでなく外科、整形外科や小児科、産婦人科など、より幅広く診療を行います。私のイメージでは、上五島病院の内科が総合内科、隠岐島前病院や手打診療所が総合診療科です。これまで勉強してきたことを、ここで実践しているような形なので非常に楽しいです。また、知らないことばかりなのですが、絶えず疑問がでてくる環境も楽しみの1つです。

実は離島で2年目を過ごすのはここが初めてで、島民の方がどういう生活をしているのか、どういうネットワークがあるのかなど今までの離島では見えなかったものが少しずつ見えてきました。
そのような中で、ご高齢の方々が思ったほど幸せに生活できているわけではないかもしれないと思うことがでてきました。住み慣れた下甑島で、安心して最期の時まで過ごす環境を整えられているのか。もしかしたらそうではないかもしれないと。

その1つの要因として、介護などの社会的資源が足りないなと感じています。2000人弱の下甑島で、家に入りヘルパーとして働ける訪問介護士は2人しかいません。訪問看護師は1人です。こういったところが改善されれば良いなと思います。

研修生の受け入れは積極的にされているのでしょうか。

ゲネプロもそうですが、人を集めるには教育が必要です。そうしたら、やる気があって若い人が集まってくれます。つながりを絶やさないというのがすごく大事だなと最近思っています。
そういう意味では、責任がすごくあると感じていて、下手な研修教育をしたら手打診療所に研修医が来なくなってしまうかもしれません。甑島の未来は少しずつしぼんでいってしまいますよね。だからこそ、自分がなるべく良い研修を提供できるようになりたいと思っています。

今は、ジェネラルに診ることができる初期研修医が増えています。専門医を取った後でも、やっぱり総合診療をやりたい、という人が一定の割合で出てくると思います。将来の仲間作りにもなるので、ぜひ多くの先生に研修に来てもらいたいですね。
私が上五島で受けたような、「こういう生き方があるんだ」ということを知ってもらいたいです。

去年は、初期研修が終わってからゲネプロへ行った人もいますし、ゲネプロから短期研修のような形でこちらに来てくれた人もいました。

この先のビジョンを教えてください。

私は本来1年契約だったのですが、今年は契約を更新して2年間滞在しました。
来年は一旦、医者をやめて下甑島に残ろうかなと思っています。

元々は子供が現在幼稚園の年中なので、このまま卒園させてあげたいとういのがきっかけでした。下甑島に残って田んぼや畑などを教えてもらいながら暮らしてみたいなという思いもありました。更に今は島の空き家や、先程の介護面についても勉強できたら良いと思っています。

まとめ

医師を一旦止めるというコメントに?が頭に浮かびましたが、そういう考え方もありだなと室原先生の取り組もうとされていることに興味を持ちました。
どんどん世の中が変革する中で、離島から新しい考え方ややり方が出てくることは面白いですし、何よりも島の方々のお役に立ちそうだなと思いました。

また、室原先生には定期的に状況を伺いたいなと思いましたし、こちらでも紹介出来ればと思いました。

最後に仕事後のお疲れの時間に快く取材を受けて頂きました室原先生に熱く御礼を申し上げたいと思います。

関連サイト

手打診療所
https://kokuhoren-kagoshima.or.jp/shinryo/653

鹿児島テレビ
https://www.kts-tv.co.jp/program/kagonew/single.html?id=194

室原先生ブログ
https://note.com/honatachi

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