ドクターインタビュー

ドクターコトークインタビュー:小徳羅漢先生(鹿児島県立大島病院産婦人科)

今回はドクターコトークこと、小徳羅漢先生にインタビューをさせて頂きました。先生と初めて出会ったのはドクターコトーこと瀬戸上健二郎先生のおられた下甑島の手打診療所でした。

2016年、瀬戸上先生の退任&引越しという知らせを聞き、ゲネプロの齋藤先生と一緒に島に取材に伺ったところ、最後の研修生ということで小徳先生がおられました。

小徳先生は自分でブログを書いておられて、そこではドクターコトークという名前で若手医師の研修の日々を綴られていました。(今は多忙でブログを書く時間もない日々だとか)

その当時からユニークな先生だと思っておりましたが、最近では様々な離島医療を盛り上げていく企画を支援されています。

それではインタビューの内容をどうぞ!

ドクターになろうと思ったきっかけについて教えてください。

父が医師で、診療所と家がくっついており、小さい頃から父の働いている姿を見ていました。往診に行く時には自転車の後ろに乗り、町の人たちが挨拶していく様子を見て、「こういう町のお医者さんになりたいな」とは漠然と思っていました。

いつ頃から本格的にドクターを目指されたのでしょうか。

父のような医者になりたいとは思っていましたが、高校まではそれほど勉強をしていませんでした。でも、高校2年生の修学旅行で伊王島へ行った時に離島医療を知り、こういうところで医者をやりたいと思い、そこから本格的に勉強し始めました。

都市部の医学部へ通いながら、離島医療に対するモチベーションを保ち続けることができた原動力は何でしょうか。

大学に受かってすぐに、離島医療への思いがぽきっと折れてしまいました。自分が描いていた医学部生活を送れていたわけではなく、やはり、新島などの離島へ旅行する度に、「いつかは離島で働きたい」と細々とですが思っていました。

大学5年生の時に友達と旅行がてら病院見学に鹿児島へ行き、その時に「本物のドクターコトーっているんだよ」と聞いて、そこで一気に夢が思い出されました。「ここしかない」と感じられたことが東京を出る原動力となりました。

そして、見学に行った病院で「下甑島に派遣できるよ」と言われたことがきっかけで研修先を鹿児島市医師会病院に決めました。

鹿児島市医師会病院は研修医は自分一人しかいませんでしたが、「ドクターコトーになりたくて、東京からきた先生でしょ」と、みなさんに可愛がっていただきました。

いろいろな診療科の先生が「離島に行くなら、この手技はできた方が良い」と、研修先としてまわっていない診療科の先生にも沢山のことを教わることができました。

鹿児島の中でも、毎年研修医が沢山入る様ないわゆる「人気病院」ではなかったのですが、実際に入ってみると医師としてのびのびと成長できる恵まれた環境だったと感じています。

ドクターコトーのところで研修をして、実際いかがでしたか。

とても濃厚な一か月でした。その一か月で色々と奇跡が繋がり、今の自分があると思っています。

本当は一年目の研修医は離島に行けないのですが、ドクターコトーが島を去る最後の月ということで、無理をいって行かせてもらうことができました。

離島を去る前のドクターコトーはどのような感じでしたか。

なんだか少し寂しそうで、みんなから一歩引いて離れて見ている様に感じました。毎週、先生のお別れ会があったのですが、先生は遠くでみんなが踊っているのを寂しそうに見ていましたね。それを見ていて、悲しい気持ちに僕もなってしまいました。

先生は、しきりに「ドクターコトーの時代は終わったんだ」と話されていました。「そんなこと言わないでください」とその時は思ったのですが、実際に離島医療に携わるようになった今は、なんとなく先生の気持ちがわかるような気がしています。

離島で印象的だったことがあれば教えてください。

先生が、「漫画の中のドクターコトー以外のことが、これからは必要だ」という言葉の意味が最初はよくわからなかったのですが、研修の1か月で必死に考えることができました。

一生懸命考え、島民とたくさん話す中で、人口がどんどん減少して若者が減っていくなど医療以外の部分や産婦人科に関わるところが大事なのだろうと今は思っています。

離島の産婦人科医について、先生のお考えをお聞かせください。

離島に住む女性の診療はナイーブなところがあるので、専門ではない人が介入するのはハードルが高いと感じています。女性の総合診療医であればそうでもないかもしれませんが、男性の場合は知識や経験をしっかりと身につけてから介入する必要があると思っています。

そう言った意味では、女性の総合診療医が増えて欲しいですし、男性の総合診療医で女性のヘルスケアに興味がある方が増えると良いですね。

ゲネプロのプログラムは、ご自身にどのような影響がありましたか。

影響は大きかったですね。ある意味、自分の中のゴールのようなものが見えたのが一番の収穫でした。オーストラリアのへき地医療は、遠隔医療など制度的な部分もそうですし、へき地医療をする医療者を育てる教育的なことも含めてシステムが完璧ですよね。

ゲネプロのエレクティブ研修では1か月おきにオーストラリアの離島、へき地を回りましたが、どのへき地へ行っても一定水準の医療が受けられるように整備されていました。

今後、日本の離島医療が学ぶべきはオーストラリアだと感じました。ただ、医療の質でいうと長崎もすごかったです。オーストラリアのRural Generalist(へき地医療専門医)制度ではないですが、日本版のRural Generalistを育てている点が素晴らしかったです。

私が今、産科総合診療医というあまり日本にはロールモデルがいない道を進む上で、いろいろなロールモデルと出会えたことは非常に良かったと思います。

学生と共に、離島医療人物図鑑などを運営されていますが、その目的やきっかけを教えてください。

最初は、大学の後輩がたまたま、「離島医療のことを話してください」と、ある勉強会に呼んでくれたことが始まりです。そのままイベントに参加するようになって、ちょうど最初のイベントが「離島医療に対して、学生として何ができるのか案を出していこう」というものでした。そして、「その中のいくつかを実行してみよう」と行動に移したのがきっかけです。

その中の一つに、離島医療人物図鑑があり、離島の魅力についてSNSを介して発信していくというものでした。私自身もブログで発信をしていたことがきっかけで、ゲネプロの齋藤先生やいろいろな人に声をかけてもらえて、今の自分があります。発信することの大切さを実感していたので、活動に参加させていただいています。

自分自身も研修医の時に出会った、誰も知らないけれど面白い先生、素晴らしい先生たちを、誰かが発信しないと勿体無いと思って取り組んでいます。

ただ、自分自身も仕事が忙しかったり、学生も学業が最優先ですから、月に1回の記事投稿をメンバーで分担することで細く長く続けられたらと思っています。

今後のビジョンについて教えてください。

鹿児島で、自分がロールモデルとなって産科総合診療医という概念を根付かせたいと考えています。

そして、鹿児島の離島医療、地域の周産期の向上によって、離島が抱えている人口減少の歯止めになれば良いですよね。システム作りをしながら、小規模で構わないので遠隔医療も導入できたら良いですね。

あとは、街中でコーヒーを配ったり、移動式映画館もしてみたいと思っています。最近、移動式の発電機を購入したので、これさえあればどこでもコーヒー屋台も映画館もできるので、今後取り組みたい活動の一つです。

まとめ

離島医療においては都市部に比べて医療的リソース(人・モノ・カネ)が圧倒的に少ない中で、モチベーション高く取り組む方をどうやって増やしていくのか?

離島医療の関係者はみんなそこに知恵を絞っているのですが、日常の忙しさについそこまでケア出来ないというところがもどかしいと感じておられます。

小徳先生の取り組みは若い方々に気づきを与えつつも、離島医療に積極的に関わってくれる方の増加に結びついていると感じております。

我々は今後も継続的にお話を伺いつつ、読者の皆様と情報共有できればと思っております。

小徳先生には休日のおくつろぎの時間に貴重なお時間を頂戴し、取材を受けて頂いた事、心より感謝申し上げます。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

関連リンク

Glocal Land

https://www.glocaland.org/

Drコトークへの道

http://dr-koto-ku.sakura.ne.jp/

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