へき地医療

tumugu調剤薬局 インタビュー(宮城県登米市)

 

やまとプロジェクトの川越美咲さんと話をしている時に「登米にこんな素敵な薬局が出来るんですよ~」と話してくれたのが今回のtumugu薬局さんでした。

「ありそうでなかったこのコンセプト、じっくりお話を聞いてみたいです!」とお話したところ、「OK、取材可能かどうか聞いてみますね」とつないで頂き、今回の記事になりました。

私は調剤薬局について常々、不満を持っていましたが、今回の取材で薬局のあるべき姿を示してくれていると思いました。

それではインタビューの内容をどうぞ!

 

こちらの薬局を作られたきっかけについて教えてください。

熊坂先生)一つとしては、登米市という地域に医療資源が非常に少なく、医療者の数も少なく、高齢化率が30%越えている地区であるということが背景にあります。

また、平成の大合併で誕生したような市なので、市の面積が広く、またインフラが整っておらず、陸の孤島と言われている地域です。そのため歩いて医療機関まで来られない人が増えていっている中、もっと薬局が在宅医療に参画し、この地域課題へ取り組むべきだと考えたことが大きな要因です。

積極的に在宅医療に参画していこうという事が、難しい現状があります。

その理由としては、従来の調剤業務を行いながら在宅医療を充実させようとすると、どうしても業務に時間がかかり効率が悪くなってしまいます。その時間効率の悪さから、なかなか薬剤師が外に出ていく時間を作れないという現状もあると思います。

そこで、これはシステムごと変え、新しい薬局の形を作っていかなければ、その課題にコミットできないということは感じていました。

そこを打破するには、私たちでゼロから作ることで、次の世代の薬剤師がやりがいを持ち、さらには薬剤師そのものを必要としてくれるような働き方ができる薬局が必要だと思いました。更に、時間かかる割に儲からないという在宅医療のイメージを根底からひっくり返し、薬局経営として継続性を持たせることが必要だと感じています。

 

日用品の宅配など、他のサービスも考えているのですか。

熊坂先生)在宅医療を受けている患者さんというのはそもそも、足がなくて困っている方ばかりです。そのため、診察や薬だけではなく、生活用品についてもお困りの場合は、介護用品など薬局で提供できるものはニーズに応えていこうと思っています。それが、私たちが進めるサービスの一つにもなりますね。

在宅医療に関わる上で、生活を見るということは私たちのポリシーに近い部分かもしれません。薬をそのまま来てもらった人にただお渡しするというだけの業務ではなくて、生活全体、その人の人生ストーリーをフォローアップできるような関わり方がしたいですね。

 

薬局の特徴について教えてください。

佐藤先生)この「tumugu」と言う名前には、人を、縁を、想いを、夢を、地域を…「つむぐ」事で、次の時代に価値あるものを形作っていくという願いを込めています。それは、そのため、医療をきっかけに、そこから繋がりを広げ、地域に新たな価値を生み出すことでまちづくりを目指している、というのが当薬局の特徴かと思います。

 

薬剤師になろうと思ったきっかけについて教えてください。

熊坂先生)実は、私の父は登米市で調剤薬局を経営していますが、それは大きな動機ではありません。今回の起業は、父とは関係ない形ですし、単純に人の役に立つ仕事が何かなと思った時に、薬剤師が身近にあったというのが理由の一つですね。

薬剤師になった時は地域をどうしたい、薬剤師会をどうしたいという大義名分はほとんどなく、取り組んでいく中でいろんな人の考えを聞き、影響を受けてきた部分が大きいと思います。

場所に関しては、実家だからと戻ってきたのですが、在宅医療に触れる中で在宅診療所の先生や看護師さん、患者さんの人生を聞きくことで徐々にこの地域に何かしたいという強い気持ちに変わっていきましたね。

佐藤先生)私は元々、薬剤師を目指していた訳ではありませんでした。むしろ、両親に安定した職業について欲しいと言われて薬学部に入った形です。ただ、私の場合も父が病院で働いていたり、隣人に薬剤師や歯科医の方が居たりと身近なところに医療がありました。今思えば意識しないところで影響を受けていたのかもしれません。実は記憶には無いのですが、小学校の卒業アルバムの将来の夢に薬剤師と書いてたんですよ(笑)

ただ、病院や僻地医療を経験する中で地域貢献であったり、次の世代がもう少し夢を持って働けるような環境を作れないかと思うようになりました。

登米市で開業されようと思われたのはなぜでしょうか。

熊坂先生)登米市が地元なので、この土地を良くしたいという思いは根底にありました。しかし、それは絶対的な動機ではなく、この形を実現できそうな仲間がいることが一番、大きかったと思います。皆が、同じ熱量で同じベクトルに向かっていっていることも心強かったですね。

チームとして、良いものを作ることができそうだという手応えがあったのでここしかないなと思いました。

 

訪問薬局だからできることなど、メリットなどあれば教えてください。

熊坂先生)一つは、業務の効率化です。

今までだと、外来の患者さんがいつ、どのくらい来局されて、どのくらい忙しいかが完全には把握できず、1日のスケジューリングが困難でした。そういう状況の中で在宅をすると、どうしても在宅は後回しになってしまいます。特に、外来が忙しい日は患者さんのご自宅へ夜遅く薬をお届けすることもありました。それについて、患者さんにご理解いただいていた部分もありますが、患者さんの生活を第一に考えると、提供するサービスの質としては高くないと思います。

こちらから訪問する業務がメインであれば、ある程度スケジューリングがしやすいと思います。

きちんとエリアを絞りながらルートの最適化を図ることで、その部分の効率を上げることができるのは在宅業務をメインで行える薬局の強みだと思っています。

また、一人一人の患者さんに向き合える時間はより濃くなるので、サービスの質としては上がっていくと感じています。

 

開業時は2名のスタッフで始められていますが、最終的な目標などあれば教えてください。

佐藤先生)基本的には多店舗展開ありきではありません。在宅需要があるものの、受け皿が無い地域があればその受け皿として。また、そういった地域で薬局をやってみたいがなかなか踏み出せずにいる方がいるのであれば、ノウハウを提供するような形でもいいでしょうし、何の形にせよ医療資源の少ない地域に貢献出来たらと思っています。

 

これからクリアすべき課題などあれば教えてください。

熊坂先生)薬局業界が変わらなければいけないですよね。社会的にも、国としても求められているところですし、そこをまず作っていくことがミッションだと思っています。

また、私は薬剤師に対しての地域医療教育事業も提供していますが、その事業を通じて薬剤師全体の底上げもしていきたいと思っています。薬剤師を世の中に残る職業にしていく、若い子たちに夢を見せられるような職業にしていくことを私たちが辞めるまでに作っていかなければならないと考えています。

それについて、スピード感を持って意識的に行う必要があり、次世代の薬剤師教育と次世代の薬局構想を同時に進め、かつ、それが地域の患者さんに対するサービスやまちづくりに還元できるような形にしなければならないですよね。具体的に何をしていけば良いのか、数年ごとに目標を明確にし、確実に前に進んでいかなければならないと思っています。

 

まとめ

4月1日にオープンされた当薬局ですが、これから着実に地元の医療に貢献されていくことが目に見えるようです。

医療での実業務以外にも他職種連携のための勉強会なども企画されており、医療を進めていく上で人と人のつながりが大事だということも実践されています。

今後も目の離せない薬局と言えるかと思います。

熊坂先生、佐藤先生、開業時のお忙しい時間に取材を受けて頂き、ありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

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