今、離島医療で注目を浴びている竹富町立竹富診療所。先日、TV番組で医療に関する取り組みを紹介されたこともあり、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この離島医療情報ネットワークでも取材させていただいたことがありますが、今回、竹富町立竹富診療所で実際に看護師として働いていらっしゃる佐野さんのお話を聞く機会がありましたので、紹介させていただきます。
竹富島の島民は0歳から105歳まで、人口は約350人ですが、年間の観光客数は50万人を超えています。これらの人々の医療をカバーするために配置されている人員は、診療所に医師1名、看護師1名、そして事務員が1名のみです。
竹富島の看護師はどんなことをしているの?
まず、多くの医療機関と同じように診療時の介助や患者さんの指導、そして採血業務が行われています。
採血日は毎週水曜日午前中に設定し、診療所で採血をしてから採血ボックスに入れ、石垣島にある竹富町役場のスタッフが拠点病院まで検体を持って行ってくれます。そして、その結果は午後になると、FAXで診療所へ送られてきます。
急患の場合は、採血後に診療所にある設備で検査を行っていますが、検査項目は限られます。
また、薬剤のお渡しも看護師の仕事です。
こちらでは、服薬アドヒアランスを上げるため、3剤以上使っている患者さんは、年齢に関係なく、分包機を使用して一包化をしています。
以前、この機械が壊れてしまったことがあるのですが、役場にお願いをしたところ予算の関係で難しいという返答がありました。ですが、全国から募金が集まり、そのお金で分包機を購入したという経緯があります。
薬剤管理についても看護師の重要な仕事であり、診療所には外用薬が210種類、注射薬が50種類あります。毎月、月末には在庫整理をし、薬剤の発注に関してはFAXで宮古島にある卸業者から調達しています。やはり、届くまでには時間がかかるので、前もって頼むように心がけています。
竹富島には、0歳から中学生まで幅広い年代の子供がいますので、町から委託を受けて診療所でワクチンの接種を行っています。ワクチンはスケジュール管理や調整も大変ですが、こちらについては役場の保健師の方と連携をしてお母さんも含めて一緒に調整をしています。
離島なので台風の影響もあって在庫を確保しにくいため、診療所では必要最小限でワクチンを確保するようにしています。
医療廃棄物の処理については、専用の医療ゴミ箱に入れて、ある程度たまった時に役場に連絡をし、密閉封印してから船で移動、石垣港から役場のスタッフが専用の業者に引き渡して適切な処理を行っています。
近年、急激に増える外国人旅行者への対応
竹富島には年間観光客が約50万人きますが、近年のクルーズ船の増加に伴って外国人旅行者が増えてきています。特に、中国や台湾、アメリカ、北欧から来られる方が多いですね。
今年度からはBe.Okinawaインバウンド医療通訳コールセンターというサービスを24時間、7カ国対応で開始しましたので、それを利用しています。
外国人旅行者に関わる看護師の業務としては、問診、回診、診察の介助、服薬サービス、お会計、そして薬のお渡しと多岐に渡り、通訳を介して行っています。
このサービスの便利なところは、電話通訳以外に必要な医療書類や問診票などを事前に月に10件まで翻訳してくれるサービスがあることです。これらのサービスを利用して、外国人の問診票についても改善を図っています。
今後の事業継続のために、利用に際して県に毎回レポートを提出する必要があるので、こちらも看護師が作成しています。
予防活動への取り組み
沖縄クライシスとして、食生活の欧米化や生活習慣の悪化等により死亡率は男女ともにワースト1となっていますが、竹富島においても動脈硬化の原因である高血圧症、脂質異常症、糖尿病の全てを持っている方のうち75%弱が65歳未満の働き盛り世代ということがわかっています。また、それに伴う突然の脳疾患等による救急搬送が多いというのも島の実情でした。
離島なので医療支援が限られていることもあり、私たちは健康づくりを目的とした「ぱいぬ島健康プラン21in竹富島」を結成。疫学データの共有などをしながら、地域住民を巻き込みながら活動に取り組んでいます。
そして先日、私たちの活動は「第6回健康寿命をのばそう!アワード」において最優秀賞を受賞することができました。
具体的な活動として、ウォーキングの普及や正しい情報発信を目的とした医療講話、そして生活習慣病に関する食事教室などに取り組んでいます。
保健指導にも力を入れていて、未治療の方や検診を受けていない方を中心に医師や保健師による家庭訪問を行い、受診率を高めています。
そして、竹富島では禁煙にも積極的に取り組んでいます。島内からはタバコの自動販売機を撤去して手に入らない環境を作りましたし、喫煙者には積極的に声かけをして禁煙外来に出席してもらっています。それでも上手くいかない場合は、私たちが小中学校へ出向き、禁煙防止教室を開催して子供から親へ禁煙を勧めてもらうことで成功した事例もあります。
このように、僻地離島であっても地域住民を巻き込んだ活動はとても重要ですし、効果を発揮すると考えられます。
竹富町立竹富診療所
https://www.ritoushien.net/taketomi.shtml
Be.Okinawaインバウンド医療通訳コールセンター
http://www.pref.okinawa.jp/site/bunka-sports/kankoshinko/ukeire/iryoutuyakukorusentar.html
この記事へのコメントはありません。