へき地医療

離島での出産を支える制度とは?

産婦人科医は全国的に、慢性的な人手不足です。そして、離島においてのそれは、もっと深刻な状態だといっていいでしょう。住人がいるにも関わらず、安心して妊娠出産できる環境にない、ということも少なくありません。

●産むために、島を出るということ

島内に住んでいるからこそ、ここで産みたい。
ここの出身で両親もいるので、島で産んでしばらく育てたい。

そういった思いを持っていたとしても、施設がなければ叶えることはできません。特に、妊娠は10ヶ月という長きに渡って定期的な検診を受けなければいけませんし、妊娠後期に差し掛かってくれば、検診の間隔はより狭まります。
その度に、重い体を抱えながら島外へと出向く必要があり、妊婦さんへの負担は想像以上にのしかかってきます。

また、妊娠中はずっと順調な道とは限りません。
切迫早産のように、長期の安静や入院が必要になってしまうことだって考えられます。
そういった場合、コスト面はもとより、長い間ひとりで入院する妊婦さんにとって、気持ちの面でも相当なストレスになってしまいます。

●少なくない離島の赤ちゃん
では、離島での出産率が低いかといえば、そうとも限りません。
実際に、厚生労働省が発表している合計特殊出生率を全国の市町村別に見てみると、鹿児島県に属する屋久島や徳之島、長崎県の対馬や沖縄県の宮古島など、2.0を超える地域は離島に多く存在していることがわかります。

*合計特殊出生率
1人の女性が、一生のうちに産む子供の数

●島外での出産に対する補助制度
今すぐに、産婦人科医が常駐するような環境づくりをすることは、困難を極めます。
そのため、全国の離島を抱える自治体では、島外で出産する妊婦さんに対して交通費や宿泊費を補助する制度を整えているところが多く見受けられます。

また、鹿児島空港から約1時間、沖縄からフェリーで7時間の場所に位置する奄美諸島の沖永良部島和泊町では、ハイリスク妊産婦旅費助成が用意されています。これは、妊産婦と新生児が島外の医療機関で受診しなければならないとき、旅費の一部を助成するという制度になります。

島外での出産は、直前だけ島外の医療機関に出向けばいいというものではありません。予定帝王切開などの場合は別ですが、通常の普通分娩では出産日を事前に特定することはできません。
従って、非常事態を避けるために事前に島外で待機する期間も必要となり、ここにもコストがかかってきます。

また、付き添いやお見舞いをするのであれば、同行者の分も費用かかかり、経済的な負担は大きくなってしまいます。

そして何より、いつ陣痛がくるのだろうと不安な気持ちを少しでも和らげることができるよう、こういった制度をうまく活用して、少しでも安心できるお産を迎えて欲しいですね。

 

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