徳洲会

与論徳洲会病院について~久志院長先生ご講演

このたび、徳洲会病院奄美ブロック研修医勉強会に取材参加してまいりました。

この勉強会は全国から集まった研修医の先生方の奄美ブロック徳洲会病院研修にて学んだことや症例検討について発表する場です。

そして、最後に与論徳洲会病院の久志安範院長先生のご講演がありました。

久志先生は与論島に赴任して22年という大ベテランのドクターです。

今回はその内容をご紹介していきたいと思います。

<久志先生のお話>

  • 与論島とは?

鹿児島県の最南端にある与論島は、周囲が24km、直径にすると約7kmの島です。車だと内まわりで30分もあれば一周することができます。そういう意味では、厚生労働省が示している「へき地」に適した場所だといえます。

また、与論島の地理的位置としては、鹿児島県から南に63km、沖縄からは北へ23km離れており、島へ行くためには鹿児島から飛行機で80分かかります。船も出ていますが、こちらで移動するとなると一日かかりになってしまいます。

島の人口は2018年10月で5,056人。平成10年の時の人口が6,300人なので、およそ10年で1,000人減少しています。世帯数は2,611、高齢化率は31.3%ですが、奄美諸島の他の地域と比較すると高齢化率は決して高い方ではありません。

  • 与論徳洲会病院について

与論徳洲会病院の歴史をご紹介すると、徳洲会の中では31番目の病院になります。奄美大島では4番目であり、平成8年に開院しました。

ヘリの搬送件数は平成27年に26件、平成28年度は24件、その翌年が21件で、平成30年度は20件でした。

ヘリはドクターヘリと自衛隊のヘリがありますが、ドクターヘリの場合は日中にしか飛ぶことができません。自衛隊のヘリは夜間も飛ぶことができますが、その場合は医師が添乗しなければならないので数少ない医師がそちらに取られてしまいます。また、島から出ると帰りは翌日となってしまうこともあり、マンパワーの問題で自衛隊のヘリは敬遠されがちです。

さらに、夜中の搬送になると、患者さんの状態が安定しない急性期のまま送ることになってしまいます。搬送そのものがリスクになるので、できるだけ夜中には送ることは避けたいものです。特に、くも膜下出血の場合は、半日ほどして容態を安定させてからでなければ、ヘリの振動や気圧で悪化することがあります。

島外への搬送について、先に述べたような問題もありますが、一番大きな問題は搬送基準が厳密に決まっていないことだと感じています。

与論病院の常勤医師は現在私一人ですが、他の徳洲会病院から1,2ヶ月の期間を定めて医師が来ることになっています。研修医は湘南鎌倉や岐阜から4、5人ほど、そして、全体の職員数のおよそ35%は看護師が占めています。

そのほか、検査技師やレントゲン技師、薬剤師もそれぞれ3名ずついますが、時間外については全て呼び出しになるので、来たばかりの研修医は本当に呼び出していいものかどうか迷いながら当直をしています。

小児科や産婦人科、その他の専門医は月に1、2回ほど来ているので、その先生が来るまで急性期の治療をしながら待つという形を取っています。また、お産については、かつて島内で出産も扱っていましたが、今は出産予定日の1か月くらい前に島外へ里帰り分娩をしてもらっています。

  • 与論島と在宅死について

与論島では毎年、80名が亡くなりますが、そのうち8割が与論徳洲会病院で入院していた人が在宅で亡くなるという形を取っています。

在宅といっても、こちらでは心臓が止まる直前、1時間くらい前に自宅へ返すようにしています。なぜかというと、与論島の場合は、自宅で亡くならないと魂が浮かばれずにいつまでも成仏できないとされており、ぜひ家に返して欲しいという家人からの希望があるからです。

しかし、早い時点でお返しすると家族の負担の問題もあるので、できるだけ最後まで病院にいて欲しいという気持ちもあります。そのため、夜中の2時、3時や明け方に病院から自宅へお返しすることも多いですね。

そういう経緯もあり、与論病院へ来る研修医は短い期間であっても在宅搬送を経験します。搬送すると親戚が待ち構えており、小さい子供でも手や足をさすって最期の時を分かち合います。島の人の場合は、人の死が身近にあって経験しているので、そういう時でも右往左往しないのではないかと思っています。

  • 離島における病院の設備について

与論徳洲会病院では、15年前から鹿児島県の補助で、専用回線を使って画像を高密度で送る遠隔の転送システムを導入しました。

また、5年前から電子カルテに変わったのですが、それまで使っていた紙カルテでは患者さんの顔写真が貼られていたので、電子カルテの左側には顔写真が入っています。ただし、それぞれが自分で撮った写真を載せているので、赤ちゃんだと思ったら20代の子が診察室に入って来たということもたまにあります。

また、離島で細菌検査室があるのは屋久島しかないので、こちらでは全て外注で行なっています。キットも活用していますが、それでも検査結果が数日経っても来ない場合があります。そういった事情もあって細菌検査室の必要性を感じてはいますが、費用対効果の面を考えると難しい側面もあります。

  • まとめ

今回は久志先生のご講演の内容をお送りしました。

先生のお話を聞いて、離島という環境のリソースも十分確保できない中で、どのように最適な医療を提供していけるのかを常に模索されているということが分かりました。

都市部の病院であれば、「機器がないとその治療は無理でしょ」とか「この人員では難しいでしょ」というような厳しい環境だけど、今あるものでやりくりしていこうよと朗らかに笑いながら、突き進んでおられる様子を拝見して、本当に凄い先生だなと思いました。

離島医療に携わる先生はパーフェクトではない状況下でも最善を尽くす。それを背中で語るような先生のお話を伺い、お目にかかれたことは本当に素晴らしいことだなと感じました。

ぜひ、次回は与論島に訪問し、取材させて頂きたいと思いました。

与論徳洲会病院

http://yorontokushukai.jp

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